MS Office用のODFプラグインを比較する
先日、Sun Microsystemsから、MS Office用のODFプラグインが公開されました。OpenOffice.orgの標準ファイルフォーマットであるODF形式のファイルを、Microsoft Officeで開いたり保存したりできるようにするためのアドインプログラムです。無償で利用できます。
(参考記事)
http://journal.mycom.co.jp/news/2007/07/04/024/
(ダウンロード)
http://www.sun.com/software/star/openoffice/index.xml
同様のアドインプログラムは、Microsoftからも提供されています。正確に言うと、外部のオープンソースプロジェクト「odf-converter.sourceforge.net」を支援する形で開発され、現在Word用が完成しています。こちらも無償でダウンロードできます。
(ダウンロード)
http://sourceforge.net/project/showfiles.php?group_id=169337
同じようなプログラムが2社から提供されているのですが、対応アプリケーションの範囲がすこし違いますから、注意が必要です。
この対応範囲の違いは、両社の思惑や、このアドインを提供するに至った理由の違いからきています。非常に分かりにくいのですが、まとめてみましょう。
表01

(黄色のセルが今回のテスト対象です)
表01を見てください。今回Sun Microsystemsからリリースされたアドインプログラムは、Office2000、OfficeXP、Office2003のWord、Excel、PowerPoint用です。単体の場合には、Wordにのみインストール可能です。ExcelとPowerPointの単体パッケージには対応していません。提供されているのは英語版で、残念ながら日本語版はありません。
このアドインの目的は、ODFを広め、ODFユーザーを拡大しようということです。Microsoft Officeユーザーを、ODF陣営に取り込もうとういう思惑で、無償提供されています。
一方、Microsoftのものは、Word2002、Word2003、Word2007用が1月31日に先行リリースされています。Excel用とPowerPoint用は、現在開発中です(11月ごろを目指しているようです)。
こちらは、Microsoft Office2007をODFに対応させることによって、Microsoftの推進する「Open XML」とODFとの互換性確保を目的しています。そのため、あくまでWord2007が対象ソフトの中心です。旧バージョンのWord2002やWord2003にも対応していますが、その場合には別途「Microsoft Office互換機能パック」が必要となります(そのほか.NET framework 2.0ランタイム環境も必要)。対応言語は、ドイツ語、英語、フランス語、オランダ語、ポーランド語で、残念ながら日本語版はありません。こちらも無償で利用できます。
さて、これらを組み込むことによって、Microsoft OfficeでOpenOffice.orgのファイルを扱うことができるようになるのですが、果たしてその実力はどんなものでしょうか。じつは、ちょうど1年前に、MicrosoftのWord用アドインを試作版(α版)の段階でテストしています。このときの印象では、50%程度の完成度でした。たとえばヘッダに設定したファイル名と日付は欠落し、フォントや文字の装飾の一部や、段組の設定なども、引き継がれませんでした。
(前回のレポート)
http://blog.nakagawamachi.net/?eid=311905
あれから1年で、状況は大きく進歩しました。なんと、Wordに関していえば、複数のコンバータを選択できるようになったのです。これは、もういちど比較してみる価値があるでしょう。どちらも日本語版ではありませんが、実は日本語ドキュメントでも利用できます。ただ、日本語独特の機能には対応できていない(たとえばルビや縦書き)ということです。そこで、日本語ドキュメントにどの程度対応できるかを含めて、テストしてみましょう。
MicrosoftのものはWord2007を目標に作成されていますので、次のような組み合わせでテストします。
(表01で黄色いセルの部分)
● Sun Microsystemsの提供するアドイン→ WindowsXP+Microsoft Office2003
● Microsoftの提供するアドイン→ Vista+Word2007
(1)Sun Microsystemsの提供する「Sun ODF Plugin」をWindowsXP+Microsoft Office2003にインストールする
画面01
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Sunの ODF Plugin を Microsoft Office2003 にインストールする
画面02 Word2003
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Wordの場合には、ファイルの種類に「*.odt」が追加される。
画面03 Excel2003
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ExcelとPowerPointは、ツールバーに「Import ODF」と「Export ODF」ボタンが追加される。
※インストールが完了すると、ODFファイルはMicrosoft Officeに関連づけられてしまいます。OpenOffice.orgとMicrosoft Officeの両方がインストールされている環境で利用することは考慮されていないようです。
(2)Microsoftの提供する「ODF Add-in for Microsoft Word」をVista+Word2007にインストールする
画面04
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ODF Add-in for Word を Word2007 にインストールする
画面05
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第2画面でインストール先のアプリケーションを選択するようになっている。
画面06 Word2007
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Word2007の「Office」ボタン(旧バージョンのファイルメニューにあたる機能)に「ODF」コマンドが追加され、ODFファイルの読み込みと保存が可能になる
(3)テスト用ドキュメントの解説
1年前にテストしたドキュメントと同じものを用意しました。最新のOpenOffice.org2.2.1に合わせてフォントなどを若干修正してありますが、基本的な内容は変わりません。
次のように、さまざまな日本語処理を組み込んであります。対するアドインは英語版なので、これらの日本語処理がどの程度通用するのか、気になるところです。
画面07 OpenOffice.org Writer2.2.1
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テスト用のドキュメントをOpenOffice.org2.2.1で表示
【機能の解説】
1. ヘッダーには「ファイル名」と「日付」のフィールドを設定しました。「日付」フィールドは右寄せ(右揃えタブ)で配置されています。
2. 中央揃えのタイトルは、「ゴシック」フォントと18ポイントの文字サイズが設定してあります。
3. 1行目に「取消線」、2行目に「文字色」、3行目に「斜体」が設定されています。
4. 2つの目の段落には、「ドロップキャップ」と「ルビ」が設定されています。それに合わせて、自動的に行間隔が広がっています。
5. 「範囲」を挿入して、本文の一部に段組を設定してみました。Writerの「範囲」機能は、Wordでは「セクション」にあたる機能です。この範囲には薄い黄色の背景色を設定してあります。
6. この段落には、インデントが設定してあります。行頭および行末の両側をインデントしています。
7. 下から2つめの段落には、段落の背景色を設定してあります。
8. ここに禁則文字の「ぶら下げ」処理があります。
(4)Sunのプラグインを組み込んだWord2003で開く
画面08 Word2003
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ファイルを開くと、セキュリティ警告が表示される。そして、なぜか、修復レポートが表示された。「OK」ボタンをクリックすると、画面09となった。
画面09 Word2003
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全体的に見ると、かなり良好な表示だ。ヘッダーも含めて、全体のレイアウトは再現されている。もちろんテキストの内容も保持されている。文字サイズなども、ほとんど見分けがつかない精度で再現されている。
画面10 Word2003
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ヘッダー情報は、きちんと保持されていることが分かる。
画面11 Word2003
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編集記号を表示して、全体の内容を確認する。
1. ヘッダーはタブで左右に振り分けられている。
2. 文字サイズ、フォント、取消線、文字色、斜体、ドロップキャップなどはすべて、適切に再現されている。
3. ルビは再現されなかった。この部分はフィールドとして取り扱われている。
4. 段組を設定した「範囲」は、適切にセクションに置き換えられている。
5. 段落のインデントや段落の背景色も、うまくインポートされている。
6. この画面では分かりにくいが、実際に文字を増減して試したところ、禁則処理の「ぶら下げ」は「追い出し」に変更されていた。
これなら、日本語ドキュメントで評価しても90点以上をつけて良いでしょう。十分実用になります。
(5)Microsoftのコンバータを組み込んだWord2007で開く
画面12 Word2007
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コンバータが起動、少し待つと「情報が失われた」というメッセージが表示される。「Details」ボタンをクリックして、内容を見てみよう。ヘッダー情報の変換がうまくいかなかったようだ。
画面13 Word2007
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画面が表示された。ヘッダーのサイズではなく、ヘッダーの位置がずれている。その部分をのぞけば、おおむねうまく変換されている。
画面14 Word2007
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ヘッダーがどうなっているかを見てみよう。Wordの標準設定では、ヘッダーやフッターを余白部分で取り扱う。それに対して、OpenOffice.orgのWriterは、ヘッダーやフッターを設定すると、そのぶん本文領域を縮小するようになっている。この変換がうまくいかなかったことを示している。
1. ヘッダーの内部をタブで左右に振り分ける設定はうまく引き継がれている。
2. 文字サイズ、フォント、取消線、文字色、斜体、ドロップキャップなどはすべて、適切に再現されている。
3. ルビは再現されなかった。ルビ文字が本文として表示されている。ただし、行間がルビ設定の名残をとどめている。
4. 段組を設定した「範囲」は、適切にセクションに置き換えられている。
5. 段落のインデントや段落の背景色も、うまくインポートされている。
6. 禁則処理の「ぶら下げ」はそのまま再現されている。
ヘッダー位置の変換をのぞけば、ほぼ再現されています。こちらも90点以上の評価をつけても良いでしょう。
(6)縦書きの表
どちらのコンバータも良好な結果だったのに気をよくして、さらに高度な日本語処理を含むドキュメントを変換してみました。縦書きの表です。
画面16 OpenOffice.org Writer2.2.1
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このような、縦書きの表を含むドキュメントを用意した。Writerの縦書きの表では、左右と上下の関係が交換となる。このれがどのように変換されるかをチックしてみようという目的だ。
画面17 OpenOffice.org Writer2.2.1
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これは、同じものを印刷プレビューで見た様子だ。ページへの配置はこのようになっている。このページレイアウトの変換も、重要なチェック項目だ。
画面18 Word2003
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Sunのコンバータを使った結果だ。表全体の縦横が入れ替わってしまった。ただし、文字列の縦書きや、セル内の配置は保持されている。
画面19 Word2003
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ページレイアウトは、このようになっている。表の縦横が回転しなければ、100点だったのだが、残念だ。表のサイズが合わないため、余白部分にはみ出して表示されている。
画面20 Word2007
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Microsoftのコンバータを使ってみよう。変換できなかった項目が、先ほどより増えている。4項目の変換がうまくいかなかったようだ。
画面21 Word2007
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結果が表示された。表の縦横が入れ替わっただけでなく、縦書きの文字列は横書きになってしまった。文字列の上下、左右の設定も、横書きの設定になってしまっている。また、表は2ページに分割されてしまった。
画面22 Word2007
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これが印刷プレビューで、レイアウトを確認している様子だ。縦書きの表としての機能は完全に失われている。
「縦書きの表」の結果をまとめると、Sunのコンバータを使った場合で50%、Microsoftのコンバータでは互換性「ゼロ」といって良いでしょう。表ではなく、通常の縦書文書なら、Sunのコンバータを使えば何とかなりそうです。
以上、Sunの提供するODFコンバータとMicrosoftの提供するODFコンバータを比較してみました。トータルとしては、Sunの方に軍配が上がりました。
ファイルの互換性に関しては、とうぶん目が離せそうにありません。
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徹底的なテスト興味深かったです。本当に互換性に関して
目が離せそうにありません。
コメント by nakata maho — 2007/7/14 土曜日 @ 8:51:26
コメントありがとうございます。
取り上げたのは英語版ですが、これなら日本語でも十分実用範囲ですね。この次は、表計算(Excel−Calc)での互換性も取り上げてみたいと思っています。
コメント by matsui mikihiko — 2007/7/14 土曜日 @ 10:15:18